橘 玲(たちばな あきら)さんの著書、『シンプルで合理的な人生設計』の要約とBook Reviewをしていきます。本書のテーマは「シンプルかつ、合理的に生きる」ですが、そもそも合理性とは「投入した資源(リソース)に対して、より多くの利益(リターン)を得ること」。100円を払って100円しか返ってこないよりも、110円になる方が合理的といえます。
本書の自由とは、哲学やメンタルの問題というより、経済的な土台があるかどうかにかかってきます。経済的な基盤、つまりインフラが整っていれば、人は自由に生きることができる。この考え方は「FI(経済的独立:Financial Independence)」と呼ばれています。
自由を手に入れるための、お金持ちになる方法は、たった3つしかありません。そして驚くことに、それはシンプルな数式で表せます。
経済的独立(お金持ちになる):資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)
この単純な計算式ですが、世界中の人が追い求める「お金持ちになりたい!」という願望や夢が、すべてこの1行に集約されています。
そのための戦略の1つ目は、収入を増やすこと。仕事での昇給、新しい副業・ビジネス(フリーエージェント)など、入ってくるお金の入ってくる道を増やしていく。次に2つ目は、支出を減らすこと。無駄遣いをやめて、本当に必要なお金の使い方をすれば、手元に残るお金が増えます。そして最後の3つ目は、運用利回りを上げること。貯めたお金を投資(インデックスファンドなど)に回し、運用することで、資産を増やしていきます。
結局のところ、お金持ちになるために必要なことは、この3つのシンプルなポイントに集約されます。収入を増やして、無駄を省き、資産を運用する。どれか1つでも自由は近づいていきますが、3つを同時に実践することで、そのスピードは加速していきます。お金の本質は驚くほどシンプルですが、そのシンプルさゆえに多くの人が見落としがちなものです。
Contents
1.『シンプルで合理的な人生設計』の概要

- シンプルで合理的な人生設計
- 著者: 橘 玲
- 発売日: 2023/3/7
- 出版社: ダイヤモンド社
- 価格: 1,760円
本書のテーマと目的
本書は、人生を構成するのは「金融資本」「人的資本」「社会資本」という3つの要素で、これらは幸福の土台になっています。これらをバランスよく取り入れることで、幸福感が高まり、充実した人生を作っていくことができます。
まず、金融資本とはお金のことで、上述した式「資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)」に集約されます。収入を増やし、支出を減らし、効率的な投資を行うことで金融資本を増やしていく。長期・積立型の株式インデックスファンドは有利な金融商品として推奨されています。一方で、レバレッジや無計画な投資には注意が必要で、リスク管理を徹底する必要があります。
人的資本は、個人のスキルや経験、知識を活用して収益を生み出す力のことです。現代の知識社会では、「好きで得意なこと」に集中し、それを長期的に追求することです。これにより、自分自身を磨き続けるだけでなく、好きな仕事を楽しみながら長く続けることができます。社会資本は、友人や同僚などの人間関係、ネットワークの価値のこと。幸福感を得るには、周囲との協力して達成していきます。ただし、単なる愚痴を共有する関係よりも、夢や目標を共有できる仲間を大切にすることです。
最強の自己啓発として、「睡眠」「散歩」が挙げられています。これらを毎日やっていくことで、合理的に人生をハックしていきます。自分自身の資源を最大限に活かし、シンプルで合理的な生き方をしたいミニマリストに向けた一冊です。
合理的な人生設計とは何か?
人生をシンプルで合理的に設計していくには、優先順位を明確にし、それ以外の要素を徹底的に効率化(排除)することです。私たちの限られた資源である時間、エネルギー、資金を本当に大切なことに集中させることで、結果が手に入ります。
何かひとつの選択肢に固執するのでなく、トライ・アンド・エラーを繰り返していきます。もし「この仕事は違う」と感じたら、早めに方向転換することも視野に入れておきます。得意でもなく、好きでもない仕事に時間を費やすほど無駄なことはないからです。 自分が「好きで、得意なこと」を見つけたら、そこに人的資本を集中させて、まずは20%の努力で80%の成果を目指すことが効果的です。
FIRE(経済的独立と早期リタイア)をしたい人が増えていますが、「アーリーリタイア」を目指すのではなく、「好きな仕事を長く続けること」が本質です。だからこそ、人生の選択は合理的かつ柔軟に、いつでも選べる自分を持っておく必要があります。
2.理論編:シンプルで合理的思考

受験勉強や仕事など目標を決めたときに、睡眠を削る人は多くいます。たとえば、いつも6時間眠っていた人が、4時間睡眠にしてその時間を自分の目標達成に使うとします。そうすれば、4時間分の「生産的」とされる時間が増えることになります。それまで1日12時間働いていたとすれば、16時間動けるようになります。
しかしそれによって、疲れたり集中力がなくなって、その「質」が下がってしまうなら、その追加の時間に意味はあるのでしょうか?私たちには共通して持っているものがあります。それが「進化的・生物学的な制約」です。人間が「生物」である以上、立場や資産、肩書きにかかわらず、すべての人に共通する「制約」というのが存在しています。それは以下の3つに分類できます。
- ① 物理的制約: 人間は夢やVR(仮想現実)の世界では自由に空を飛べるが、現実世界では物理法則に縛られている。空を飛ぶことはできず、身体的な限界が存在する。
- ② 資源制約: 人生で使える資源には限りがある。最大限のパフォーマンスを発揮するためには、1日8時間の睡眠が必要。さらに近年の科学的研究で、仕事や勉強の効率を最大化するには「質の高い睡眠」にあることが明らかになっている。
- ③ 社会的制約: 3つの制約の中でも厳しいのが「社会的制約」。人間は社会という共同体の中で生きているため、常に他者の評価や目を意識せざるを得ない。どのような立場の人であっても、社会的な常識や倫理を完全に無視することはできない
結局のところ、私たちが直面する制約は普遍的であり、それを無視して睡眠を削るような「生産性」だけを追求することは、長期的には逆効果になる可能性が高くなります。重要なのは、これらの制約を分かったうえで、その範囲内で最大の成果を引き出す方法を見つけることです。
進化的合理性と、論理的合理性の違い
私たちの意思決定には、短期的最適化(進化的合理性)と長期的最適化(論理的合理性)というふたつの決定があります。目の前のケーキを食べるのが、短期的最適化であるのに対し、ダイエットや健康のためにそれを我慢するのが長期的最適化です。短期的最適化は、その場の、幸福感をもたらすのが特徴であり、脳の報酬系を刺激して快感を与えます。一方で、長期的最適化は地味で即時の満足感は得られないものの、長期的にはより大きな幸福(効用)をもたらしています。
私たちは常にこの2つの合理性で葛藤しており、多くの場合、短期的な幸福感をもたらす進化的合理性が勝ってしまいます。しかし実際には、長期的な視点に基づく論理的合理性を選ぶことで、より大きな利益を得られることが多くなります。
つまり、選択とは「有限な資源をどのように配分するか」を決めることで、その本当の目的は「短期的にも長期的にも幸せ(効用)を資源配分をすること」にあります。しかし、この目標は矛盾も持っていて、簡単には達成できません。なぜなら、「何かを得るためには、何かを諦める必要がある」からです。進化的合理性と論理的合理性で葛藤しながら、私たちはより良い選択を探し続けています。
選択を減らすことで得られる豊かさ
何かを選ぶということは、常にふたつのコスト(費用)が発生します。ひとつ目は、認知能力を消費する「処理コスト」のこと。脳は多くのエネルギーを使う器官のため、基本的には「なるべく考えない」状態で動いています。しかし、何かを選ぶためには、この設定を意識的に切り替えなければならず、そのたびに処理コストが発生しています。トレードオフの多い状況で繰り返し選んでいると、脳は少しづつ疲れていきます。
もうひとつのコストは、「何かを選ぶと別の何かを失う」ということです。これは「機会費用」と呼ばれます。たとえば、財布に100円しかない場合、リンゴを選ぶとミカンを食べる機会を失う(あるいはその逆も然り)。このように、何かを選ぶにはトレードオフが発生し、機会費用が伴います。
ここでの「良い選択」は、処理コストと機会費用をできるだけ最小化することです。ただし、選択のコストを完全になくすことはできません。こう考えると、「選択の必要を減らせば減らすほど、人生は豊かになる」ということです。
選択のコスト(処理コストと機会費用)が少なければ、その分リターンは増えます。そして、増えたリターン(資源)をより重要だと思うことに集中させることで、社会的・経済的に人生はより豊かになっていきます。反対に、選択に追われる生活を続けると、幸福度が大きく低下してしまう可能性があります。
ここで、現実的すぎる原則があります。それは「選択を避ける最もシンプルな戦略は、お金持ちになること」ということです。
「時間がない」は「お金がない」と同じこと
「お金」という資源よりもさらに大事なのは、「時間」という資源の制約です。経済的な制約というのは資源を増やすこと(お金持ちになる)で解決できます。しかし時間の制約は、物理的・生物学的なものなので、そもそも解決策がありません。
脳は「お金がない」と「時間がない」を区別していません。どちらも「食べ物がない」ときと同じ脳の部位を活性化させています。飽食の現代では、私たちは食料不足を心配する必要はなくなり、むしろ肥満の食べすぎへと変わっていきました。ただ、これは人類の歴史から見るとごく最近のことです。
ヒト(ホモ・サピエンス)の数百万年にわたる歴史、さらに生物としての40億年の歴史において、飢餓は大きなリスクです。脳は食べ物がないという環境で進化してきたため、現代のように食べ物が多すぎたとしても、空腹を感じると「このままでは死んでしまう!」と警報を鳴らします。これがダイエットに失敗しやすい理由で、「痩せたい」という意志は、ほとんどの場合、無意識下にある「死への恐怖」に打ち勝つことができません。
遺伝子はすぐに変わらないので、環境が変わっても、すぐに新しい機能を脳に入れられません。私たちはこれまで使ってきた「ありもの」の機能で対応している状態です。
その一方で、「時間がない」という感覚は、貨幣経済に移った後も多くの人が経験することはありませんでした。人類史において、毎日は単調な作業の繰り返しで、そのなかで結婚し、子供を育て、老いて死んでいったからです。しかし産業革命後、ほとんどが知識集約型に変わっていくと、学校や会社では「決められた時間内に作業を完了させる」というルールが生まれていきます。あたりまえのように感じますが、これは人類にとって新しい事態です。そもそも人間の脳は、このような「異常」な環境には慣れていません。
良い選択 = コスパとリスパの最適化
資源が有限であるとわかったことで、次にそれをどのように使っていくのかが重要です。これがコスパ(コストパフォーマンス)であり、同じ費用でできるだけ大きなリターン(利益)を得ることを目標にしていきます。たとえば、100円のコストで120円分のリターンが得られれば、コスパは20%。200円分のリターンならコスパは100%です。このように、コスパはリターンとコストの比率(リターン ÷ コスト)でシンプルに表せます。
これとよく似たものに、リスパ(リスクパフォーマンス)があります。リスパは「同じリスクなら、より大きなリターンが得られる方が良い」という考え方です。逆に言えば、「同じリターンなら、リスクが小さい方が良い」ということになります。
良い選択は、コスパだけでは判断できず、小さなコストで大きなリターンを得られる可能性があっても、失敗したときのリスクが大きければ、その選択に意味はなくなってしまいます。たとえば、1万円を投資して99%の確率で100万円を得られるとしても、1%の確率で命を落とす可能性があるとしたら、その賭けはどうなのでしょう。つまり、良い選択は「コスパとリスパを最適化すること」になります。
もともとコスパとリスパはファイナンスの用語であり、金融(資産運用)を考えるときに使われます。ただしこの原則は、人的資本(働いてお金を稼ぐ能力)や社会資本(人間関係)においても使うことができます。おなじ仕事をするのであれば、給料やが高いほうがコスパは良くなります。同じ給料なら、安定しているほうがリスパは高くなります。
後悔を最小化する選択とは
人生において後悔は避けられないものですが、それを最小化することはできます。後悔というのは、選んだの結果が期待に届かなかったときや、選ばなかった選択肢のほうが良かったのではないかという比較から生まれます。このため、後悔を最小化するには、選択を行うときに「最良の結果」を求めるのではなく、「最悪の結果を避ける」視点を持つことです。
心理学者バリー・シュワルツが提唱した「マキシマイザー」と「サティスファイサー」という概念は、この問題を簡潔にまとめています。マキシマイザーは常に最良の選択を求める傾向にあり、結果として後悔や不満を抱きやすい傾向にあります。一方で、サティスファイサーは「十分に良い」選択で満足するため、後悔のリスクが低くなります。後悔を最小化するには、自分の価値観に基づいて「満足できる基準」を決めて、その基準に合うかどうかで選ぶことです。
また、後悔を減らには、長期的な視点を持つことも欠かせません。短期的な利益や快楽を追い求めると、将来的に後悔になってしまう可能性が高いですが、長期的な幸せを優先する選択は、後悔を軽減するだけでなく、人生全体の満足感を高めることにもなります。この視点を持つことで、後悔を最小化することができます。
3.睡眠と散歩が最強の自己啓発

睡眠不足になると、仕事や勉強のパフォーマンスが下がり、身体や健康といったメンタルヘルスに影響を与えます。さらに、アルツハイマーのリスクも高まることもわかっています。睡眠は記憶力や運動スキル、思いがけないアイデアにも関わってきます。まさに「最強の自己啓発」と言えるでしょう。
さらに本書では、睡眠が大事とわかった上で、つまり資源である時間の制約が浮かび上がってきます。
よく眠ることが生み出すポジティブな効果
そもそもなぜ、人間や動物は、なぜ眠るのでしょう。この問いは長年の謎で、1970年代には「睡眠には何の役割もない」という学者さえいました。しかし、睡眠が必要不可欠であることは明らかです。動物実験でもその事実は証明されていて、ラットを眠らせない状態にすると、平均15日で死亡してしまいます。
睡眠不足のラットは、皮膚がボロボロになり、足や尻尾には傷ができていきます。解剖すると、肺に液体が溜まり、内出血が見られ、胃の内壁には潰瘍まであります。また、肝臓や脾臓、腎臓などの内臓はサイズも減っていたのに、ストレスに反応する副腎は大きくなり、コルチコステロンという不安に関連するホルモンが分泌されていました。
1950年代になると、睡眠中に眼球が動く「レム睡眠」が発見されました。レム睡眠は浅い眠りの状態で、私たちはこの時間に夢を見ています。一方、眼球が動かない「ノンレム睡眠」にはN1、N2、N3という3段階があり、N3では脳波が大きくゆっくりとした「徐波睡眠」と呼ばれる深い眠りに入っています。この徐波睡眠中には、脳の基底部にある下垂体から成長ホルモンが分泌されます。子どもが眠っている間に成長するのは、この成長ホルモンのおかげです。
さらに、睡眠は抗体やインスリン分泌にも関わっています。睡眠中は免疫反応が活発になり、抗体の生産性が上がるため、ワクチンの効果を引きだすには、やはり睡眠が必要です。また、睡眠不足はインスリン分泌にも影響を及ぼします。
結局のところ、認知症を予防し、健康を維持する最大の秘訣は「しっかり眠ること」になります。睡眠は単なる休息ではなく、脳や体の健康を守るために欠かせない、生物学的に最も重要なメンテナンスタイムだと言えます。
アルコールと睡眠薬に注意!
アルコールは、鎮静剤に分類される薬物の一種です。脳内の受容体に結びつき、神経の活動を抑える働きがあります。ただし、この効果は睡眠を促すものではなく、前頭前皮質を麻痺させるものです。アルコールは、夢を見させるレム睡眠を抑制するため、夢を見ることができなくなります。
また、アルコールは眠りを通じた学習効果も阻害してしまいます。ある実験では、新しい言語の文法を学んだ被験者が初日にアルコールを摂取した場合、1週間後には学んだことの半分を忘れてしまう「部分的な記憶喪失」になりました。さらに、初日と2日目はしっかり眠り、3日目の夜だけアルコールを摂取したグループでも、覚えた内容の40%を失っています。これにより、複雑な知識を脳に定着させるには、数日にわたるレム睡眠が必要になります。こうした影響を考えると、アルコールを減らすだけでなく、夜には極力飲まないほうが良いでしょう。
さらに睡眠を阻害するのは、アルコールだけではありません。睡眠薬(催眠鎮静薬)はアルコール以上に睡眠に悪影響を及ぼします。睡眠薬で眠った脳は自然な深いノンレム睡眠を失い、脳の外側だけが眠っている状態になります。そのため、睡眠薬を飲んで眠っても朝の目覚めがすっきりせず、日中に眠気が残っている状態になります。この眠気をコーヒーやお茶などのカフェインで乗り切ろうとすれば、カフェインの影響で寝つきが悪くなり、再び睡眠薬に頼るという悪循環に陥っていきます。
「睡眠薬がないと眠れない」という方も多いかもしれませんが、実際には睡眠薬とプラセボ(偽薬)で眠りの質に大きな差はないとされています。寝つきに関しても、どちらを摂取した場合でも通常より10~30分早く眠れる程度で、効果に大差はない。研究者たちは「現在市場に出ている睡眠薬は、医学的な観点で見るとその効果は限定的であり、重要性に疑問が残る」という声もあります。
アルコールや睡眠薬は、一時的な安らぎを得ることができるように感じられるかもしれませんが、長期的には健康に悪影響を及ぼします。良質な睡眠を得るためには、これらの影響を理解し、できるだけ自然な睡眠を心がけることが大切になります。
日常に散歩を取り入れるメリット
睡眠が私たちのパフォーマンスや健康に影響してくるのと同じほど、大事な最強の自己啓発は「歩くこと」です。現代では過去の人類・祖先に比べて、骨密度が明らかに低くなっています。たとえば、チンパンジーやアウストラロピテクスの骨密度は30〜40%ほどだったのに対し、現代人は20〜25%程度。これほどの変化が短期間で遺伝子によるものとは考えにくく、その原因は環境、つまり私たちが動かなくなったことにあると言われています。
なかでも女性は、加齢や閉経によるエストロゲンの減少で骨が細くなりがちです。もともと低い骨密度がさらに下がることで、骨粗鬆症や骨折のリスクが高まります。アメリカ国立がん研究所の調査では、毎日25分のウォーキングを行う人は運動不足の人に比べて平均4年も長生きするとわかりました。たった10分でも寿命が2年延びるとの結果もあります。
運動不足が死亡リスクを倍増させるのに対し、毎日20分の散歩でそのリスクを3分の1に抑えられることになります。また、散歩をすると乳がんリスクを減らす効果もあり、エストロゲンの血中濃度を下げたり、DNAの修復を助ける働きも期待できます。さらに、心疾患を防ぐ効果も見逃せません。毎日30分歩くだけで冠動脈疾患のリスクが18%下がることもある。つまり、歩くことは手軽でありながら、私たちの健康におおきな影響を与えていると言えます。
4.幸福と脳の進化的・論理的合理性

進化的合理性と論理的合理性について、詳しく見ていきます。日本では銀行にお金を預けても「ゼロ金利」があたりまえになっていますが、「金利のある世界」では預金をすることで、複利でどんどん増えていきます。タンス預金では、いつまでたっても100円は100円のままです。この複利という仕組みが、『複利で伸びる1つの習慣』のように、お金だけでなく、私たちの目標に対し絶大であることは間違いありません。
イソップ寓話「アリとキリギリス」にあるように、仮に、10万円を持つ友人が二人いるとします。一人は稼いだお金をすべて使ってしまい、もう一人は毎年10万円を貯金し、それを年利5%で運用したとします。キリギリス君は1円も貯金しないので、銀行口座の金額はいつまでたっても10万円のままです。
一方で、アリ君は10年後には125万円、20年後には330万円まで貯金を増やします。この運用を子どもや孫、ひ孫へと続けていくと、80年後(4世代後)にはアリ君の一家の貯蓄は約1億円になります。それに対して、キリギリス君の一家は依然として10万円のままです。この時点で、両者の間にはなんと1000倍もの格差が生まれてしまうのが、複利の力です。
幸福を得るには「慣れ」を理解する
人生で何かを選ぶときには、「限界効用の逓減」を知っておくと選択肢の幅が広がります。この「逓減」とは、少しずつ減っていくことを意味しています。たとえば、ビールの最初のひと口はびっくりするほど美味しく感じるはずです。でも、2杯目、3杯目と飲み進めるうちに最初の美味しかった感情は薄れ、最後にはなんとなくで飲むことになる経験があるはずです。
この「美味しさ」のことを経済学では「効用」と呼びます。そして、次に飲んだ美味しさ、つまり効用の変化を「限界効用」と言います。ビールを飲むほどその美味しさが少しずつ減るように、限界効用は逓減していきます。これは私たち人間だけでなく、神経系を持つすべての生き物に共通する現象です。
なぜこのような仕組みが存在するのか?たとえば、空腹時の最初のひと口がずっと美味しいままだと、私たちはその場で食べ続け、やがて捕食者に襲われてしまうかもしれません。これでは生存にも繁殖にもつながりません。進化のなかで、このような過剰な行動を取っている生き物は淘汰されていきました。その結果、限界効用が逓減する仕組みが備わり、食事だけに執着するのでなく、縄張りを守ることやパートナーを見つけることなど、他の活動にも集中できるようになったからです。
ただし、「良いことがだんだん消えていく」というのは、悲しいことではありません。この仕組みは、「悪いこと」にも同じように働きます。たとえば、大切な人との別れは大きな悲しみをもたらしますが、その悲しみもずっと続くわけではありません。時間とともに少しずつ和らぎ、もういちど前へ進む力が湧いてきます。このように、効用の逓減は私たちが生きていくためには必要な仕組みになっています。
年収800万円が幸福の基準となる理由
資本主義社会のなかで、お金というツールは私たちの幸福度に大きな影響を与えています。そのため、ほとんどの人が口にださないまでも、心の底では「お金持ちになりたい」と思っているでしょう。しかし、「あればあるほど幸福になれるか」というと、そうではありません。収入や資産による幸福の効果にも限界効用があり、それは逓減する性質を持っているからです。
興味深いデータとして、日本では年収800万円がその基準だとされています。この数字は個人の場合の話で、夫婦や子どもがいる家庭では、だいたい年収1,500万円くらいが目安になっています。
この「幸福が増えなくなる収入のライン」は、「お金をそれほど気にせずに、世間で『幸福』とされる暮らしができるライン」になります。独身なら、ブランドの服を買ったり、レストランで食事をしたり、海外旅行に行ったりできる。結婚していれば、子どもを私立学校に通わせたり、夫婦で外食をしたり、家族旅行に行くといったレベルです。この条件を満たしてしまうと、それ以上の贅沢をしても幸福度が劇的に上がることはありません。
脳が持つ3つの「資源制約」とは
脳という臓器は、体重のたった2%の重さですが、基礎代謝の20〜25%ものエネルギーを消費する、非常にぜいたくな存在です。進化の過程で、食料が非常に貴重だった時代には、このエネルギー消費を抑えることが生存に関わってきました。そのため、脳はなるべく効率よく、少ないエネルギーで物事を判断するようになっていきます。また、選ぶことに時間をかけすぎると機会を逃すということもあります。
つまり、こうした背景から、脳は「なるべく楽をして、素早く判断する」ことを優先する仕組みを持っています。その結果として、進化的合理性には、「目の前の利益を優先する」傾向があります。長期的な利益を考えるには多くのエネルギーが必要になるし、進化をしていくなかで「いま、この瞬間」が最優先だったからです。
さらに、脳は物事を単純な因果関係で捉えようとします。たとえ直感で選んだとしても、その判断に納得するためには、自分に都合の良い理由を作り上げることが必要になります。たとえば、「相手が攻撃しようとしていたから仕方なく反撃した」などです。また、自然現象のように理由がわからないことは不安を招きます。そのため、呪術的な因果関係をむりに作り上げて安心しようとします。
最後に、脳にとって客観的なことは必ずしも重要ではありません。生き物にとって重要なのは、生存と繁殖を高めることであり、その目的に合う範囲でのみ事実を活用します。論理的で客観的な事実を重視する考え方が社会的地位や経済的成功につながるようになったのは、産業革命以降の話になってからです。進化の歴史から見れば、この300〜400年はほんの一瞬にすぎません。
私たちの脳の仕組みは、長い進化の歴史のなかで育まれてきた合理性に基づいていることがよくわかります。しかし、それが現代社会では必ずしも適応的でないことがあるため、この仕組みを理解しながら自分をコントロールすることが重要になります。
脳が持つ4つの「社会制約」とは
私たちは、社会性に優れた生き物です。学校や職場など、常に共同体との関わっており、そのなかで生きるために進化してきたと言えます。この「社会の制約」のもとで、人間の脳は特有の特徴を持つようになっていきます。
まず、私たちは周囲に同調する性質を持っています。これは、昔の環境では共同体から外されることが命に関わる問題だったためです。嫌われたり、反感を持たれることを避けようとするのは、まさに生存のために備わった本能なのです。
次に、評判を得ることにも敏感です。共同体のなかで調和を保つというだけでは、異性を惹きつけるのは難しくなります。遺伝子を残すためには、周囲との協調を図りつつも、自分という価値をアピールして目立つ必要がありました。これが、私たちが「地位・名声」を求める理由になっています。
またそれだけでなく、人間は共感する力も進化させてきました。子どもは長い時間をかけて育てられるため、夫婦や親子の間でお互いを思いやる気持ちが育まれていきます。この共感力は家族だけでなく、同じ共同体や仲間にも広がっていきます。ただし、共感の範囲には限界があり、自分たち以外の共同体に対しては共感が及ばないことも多くなります。そのため、共同体外の人を排除することもあります。進化のなかで、限られた資源をめぐって他の共同体と争ってきたからです。
この結果、私たちは「味方」と「敵」を分けて考える性質を持つようになり、これが差別に繋がっていき、現代でもその影響が見られています。
5.成功に至る意思決定の考え方
物事のたとえとして、コップに水が半分入っている状況を見て、「半分も入っている」と思うか、「半分しか入っていない」と思うかで、人生の捉え方が変わるとよく言われます。たしかに、コップに半分も入っているという楽観的な考え方の方がうまくいくという結果はあります。ただし、楽観的が必ずしも悲観よりも優れているわけではありません。それでも、多くの自己啓発本などでは「考え方を変えて、もっと楽観的になりましょう」と言われます。
現実はそう簡単ではありません。なぜなら、考え方はすぐに変えられるものではなく、遺伝的な要因も影響しているからです。いつも前向きに物事を考えられる人がいる一方で、どうしても悲観的な見方をしてしまう人もいます。こうした性格や癖は、本人の努力だけではなかなか変えられないものです。
自分の性格を変えるよりも、水が半分しか入っていないコップを見て悲観的になりやすいなら、小さなコップに水を移し替えてしまいます。すると、同じ水の量でもコップが満たされているように見えます。この方法なら、性格や考え方に関係なく、誰でも状況をポジティブに捉えられます。無理に、考え方を変えるのでなく、環境を変える方が効果的になります。これは転校や転職、引っ越しなど、生活を変えることにも当てはまります。環境が変わってしまえば、見える景色や感じ方も自然と変わります。これこそが「合理的に成功する」ための基本的な考え方です。
「習慣」が奇跡を起こす仕組み
心理学者のウィリアム・ジェームズが、19世紀に「私たちの生活は習慣の集合体に過ぎない」と言っているように、私たちの日常行動の40%以上は意識的に選んでいるのでなく、無意識の習慣に基づいているという研究もあります。
本書にでてくる、リサ・アレンという34歳の女性は、16歳で喫煙と飲酒を始め、それから肥満に悩み、20代半ばには多額の借金を抱えていました。仕事も長続きせずに、まさに「どん底」の人生になっていました。そんな彼女にさらなる不幸が起こり、夫から「他の女性を好きになったから別れてほしい」と言われました。このことで傷ついた彼女は、クレジットカードを限度額いっぱいまで使い、エジプトへの傷心旅行に向かいます。
カイロ近郊の砂漠をタクシーで走っているときに、彼女はふと「いつかこの砂漠を横断したい」という目標を思いつきます。その後、その目標を実現するために、まず彼女はタバコをやめることを決意します。そして禁煙を成功させた6カ月後、ジョギングを始めた彼女は、次第に食生活や睡眠、働き方、そして貯金の仕方まで変えていきます。フルマラソンを完走するまでになり、大学に戻り、家を購入し、婚約まで果たしました。そして、禁煙から11カ月後には友人たちと共に、エジプトの砂漠を横断するという目標を達成したのです。
これは目標を設定(いつかこの砂漠を横断したい)と決めたことにより、いままでの習慣を変えることで、他の行動も連動して変わっていきました。これを「キーストーン・ハビット(要となる習慣)」と呼びます。彼女の場合、タバコをやめることがきっかけとなり、人生は変化していきます。このように、たった小さな習慣だとしても少しづつ大きな結果になっていきます。
リスクとリターンのバランスを取る方法
リスクと聞くと、「リスクの小さな債券や銀行預金のことで、リスクの大きな株式のことかもしれない」と思うかもしれません。では、リスク・リターンの関係を考えると、株式より債券に投資する方が有利なのでしょうか?もちろん、一概にそうとは言えません。その理由は、債券と株式では期待できるリターンが違うためです。長期データを見ると、株式の期待できるリターンは債券を上回っている傾向があります。
仮に、債券の期待リターンを3%、株式の期待リターンを8%とします。株式はリスクが大きい分だけ、得られる可能性のある利益も期待できます。このため、リスクが大きくても、リターンがそれ以上に大きい場合、その投資の方が優れているといえるわけです。株式は短期的には上がったり下がったりの動きがありますが、長期的には債券のリターンを上回る年が多くなります。
さらに、毎年のリターンの差が複利で積み重なっていくため、10年や20年という長いスパンで見ると、株式の収益は債券を大きく上回る結果をもたらします。これが「よい株はずっと長く持つべき」といわれる理由です。
では、手持ちの資産をすべて株式に投資するべきでしょうか?若い頃はそういった投資対象も良いのですが、すでに金融資産を持っていて、働ける年数が限られていると、元本保証型の金融商品を増やすほうのが一般的です。というのも、リーマンショックのときは、インデックスファンドですら価格が半分にまで下がったためです。高齢者のときに全財産を株式に投資していた場合、数週間で大きな資産を失うこともあります。
若いうちは株式比率を高く持って、年齢とともにその割合を減らしていくのが合理的と言えます。それぞれのリスク許容度に応じて資産を振り分けることで、効率的かつメンタルも安定した投資ができるようになります。
ベイズ確率を活用した意思決定
ベイズ統計(トーマス・ベイズは18世紀イギリスの牧師)はわかりにくい理論ですが、たとえば、出張から帰宅したあなたがタンスのなかに見覚えのない女性用下着を見つけたとします。このとき、パートナーが浮気をしている確率は、下着を見つける前と後でどう変わるのか?
ベイズの定理:P(A|B) = P(B|A) × P(A) / P(B)
- (P(A|B)): 事後確率。事象(B)が起きたときに事象(A)が起きる確率。
- (P(B|A)): 尤度(ゆうど)。事象(A)が起きたときに事象(B)が起きる確率。
- (P(A)): 事前確率。事象(A)が起きる確率。
- (P(B)): 周辺確率。事象(B)が起きる全体的な確率。
この確率を計算するには、3つ以上の要素が必要になります。1つ目は「事前確率」です。一般的に既婚者の4%が浮気をすると言われているなら、それが事前確率です。2つ目は「浮気をしている場合に下着が存在する確率
」です。もし本当に浮気をしていたら、見つかりやすい場所に下着を残すだろうか? これを主観的に50%と設定します。3つ目は「浮気をしていない場合に下着が存在する確率」です。可能性は低いですが、たとえばパートナーが女性用下着を身につける趣味を持っているかもしれません。これを主観的に5%と設定します。
ここで重要なのは、これらの確率は完全にデータに基づいているわけではなく、主観的な判断も含まれているという点です。つまり、ベイズ統計では「主観確率」という概念が使われる予測になります。
この条件で計算すると、パートナーが浮気をしている確率、いわゆる「事後確率」は29%となります。このように、ベイズ統計は不完全な情報からでも確率をアップデートし、より合理的な結論に近づくためのツールになります。
6.実践編:合理的に人生を設計するための戦略

ではここから実践編として、「幸福に生きるにはどうすればいいのか?」というテーマに入っていきます。そのためには、まず「幸福とは何か?」を明確にする必要があります。ですが、このテーマは多くの哲学者や宗教家、心理学者たちが時間をかけて議論しており、いまでも専門家から一般の人まで、いろんな意見が飛び交うテーマなことは間違いありません。
なので、実験とエビデンス(証拠)を伴っている、幸福という抽象的なテーマに対しての科学的なアプローチをまとめていきます。
1つ目は、「幸福感には個人差があり、そのほとんどは生まれ持った遺伝的要因や幼少期の環境によって決まっている」ということ。つまり、人それぞれが感じる幸福の「基準値」は、ある程度あらかじめ設定されているということ。誰もが無限に幸福になれるわけではなく、それぞれの「幸福の器」のようなものが存在しているということ。
2つ目は、「良いことが起これば一時的に幸福感は高まって、悪いことが起これば一時的に幸福感は下がるが、長期的には元々の幸福度に戻っていく」ということ。宝くじに当選して一時的に大きな幸福になったとしても、時間が経てばその幸福感は薄れ、元の自分の幸福度へと戻っていく。逆に、不幸なことがあっても、時間とともに回復し、元の幸福度に収束していくということ。
これらのポイントは、幸福になるためには、外部ことに一喜一憂するよりも、自分自身の「幸福の器」で、日常のなかで少しずつ満たしていくことが大切になります。遺伝的な要因や環境によって「幸福の基準」がある程度決まっているとしても、日々の習慣や考え方で、その基準を最大限に活かすことができます。
幸福を左右する「親ガチャ」の影響
「親ガチャ」というのを簡潔にまとめると、「生まれ持った環境や家庭の影響で幸福度に差が生まれる」という現実です。さらに、幸福度の基本的なことは、大人になってからも大きく変わらないとも言われています。
私たちは無意識のうちに、身近な人と自分を比較して一喜一憂しています。自分より恵まれた人を見れば劣等感を覚えるし、自分より劣った人を見れば安心感を得る。これは脳の基本的な仕組みであり、生物学的なことです。皮肉なことは、短期的な満足感を得るために自分より劣った人とばかり関わり、自分より優れた人を避けていては、長期的には自分自身の成長だったり幸福を損ねることになります。
また、幸福感は「どれだけ改善されたか」という相対的な変化から生まれます。数値や誰かとの比較ではなく、自分自身の過去や日々の小さな変化が幸福感を左右しています。脳は大きいことに関しては比較しません。自分の身の回りだったり、職場や学校、家庭、友人関係といった半径10メートル以内で感じることが、幸福に繋がっていきます。
結局のところ、幸福は比較のなかにあり、それは外部の指標ではなく、自分の身近な世界のなかに存在するものです。自分に起こったことをどのように受け止め、どのように感じるか。それが幸福を左右する要素になっています。
人生の8つのパターン
人の幸福は「資本」のバランスによって変わります。ここでいう資本とは、金融資本(お金)、人的資本(スキルや仕事)、社会資本(家族や友人関係)の3つです。これらの資本の組み合わせによって、8つのさまざまなライフスタイルや幸福度が見えてきます。
まず「貧困」の状態は、3つの資本が何ひとつない状態です。お金もなく、頼れるスキルや人間関係もない状態では、幸福の土台はありません。一方で「プア充」になると、収入や貯蓄はほとんどなくても、家族や友人との関係がしっかりしている状態です。地方で友人や仲間と楽しく過ごしながら非正規雇用で働く人などが典型的です。生活は質素でも、孤立していないため「貧困」とは言えません。
次に「ソロ充」は、専門職などで安定した収入を得ているものの、友人関係は薄く、恋愛にもあまり興味がないタイプです。一人暮らしで趣味や仕事に集中し、日々の生活に満足している人が多いです。逆に「孤独なお金持ち」は、経済的には不自由がなくても、家族や友人とのつながりが希薄な状態です。しかし、趣味や自分の時間を存分に楽しめるため、不幸とは言い切れません。
「リア充」は、仕事もプライベートも充実しているタイプです。仕事をバリバリこなし、恋人や友人との時間も大切にしています。ただし、そのライフスタイルを維持するにはコストがかかるため、意外と貯蓄は少なかったりします。「ソロリッチ」は、高い収入を武器に資産を築いた独身者で、友人関係は薄いものの、経済的な不安がないため満足度は高いです。
「マダム」は、働かずして経済的に余裕があり、友人関係にも恵まれたタイプです。夫や親の資産を活用し、ママ友などを通じて社会資本を維持しています。そして「超充」とは、3つの資本すべてを手に入れた状態です。この超充は理論上は完璧な幸福ですが、現実には非常に難しい境地になります。
重要なのは、これらの資本を1つだけに頼らないことです。1つの資本だけでは、それを失った瞬間に「貧困」に転落するリスクがあります。家族を失った「プア充」、仕事を失った「ソロ充」、資産を失った「孤独なお金持ち」など、どのケースも不安定です。だからこそ、2つ以上の資本を持つことが安定した幸福への近道です。
人生をロールプレイングゲームとして捉える方法
人生はまるでロールプレイング・ゲームのようだと言われることがありますが、これは単なる比喩ではありません。なぜなら、人間の脳はすべての体験を「物語」として捉えようとするからです。逆に言えば、よくできたロールプレイング・ゲームは、私たちの人生の経験に似ているからこそ、多くの人を夢中にさせます。
どんなゲームでも、難しすぎてクリアできないものは「無理ゲー」と呼ばれ、すぐに飽きてしまいます。でも、それと同じくらいつまらないのは、最初からキャラクターのレベルが最高で、何の苦労もなく簡単にゴールしてしまうゲームです。ゲームのおもしろさは、弱い状態から少しずつレベルを上げいって、試行錯誤しながら進み、それを乗り越えて手に入れる体験の積み重ねにあります。
人生もまったく同じで、生まれた環境が厳しく、どれだけ努力しても報われず、苦しい状態が続くのはつらいものです。その逆で、裕福な家庭に生まれて、何ひとつ苦労せずに生きてきた場合でも、心から幸せを感じられない人は少なくありません。どれだけ努力して成功を手に入れても、「親の七光り」と言われ、自分の力を認めてもらえないことがあるためです。
人生の幸福度は、与えられた環境や生まれ持ったステータスだけで決まるものではありません。そこからどう努力し、どのように壁を乗り越え、物語を紡いでいくのか、それこそが人生という「ゲーム」の最大の魅力でになっています。
7.金融資本を成功に導くルール

ここからは、お金持ちになるための方法についてシンプルに考えていきます。といっても最初にまとめたように、これを表すのは、3つの要素しかありません。
経済的独立(お金持ちになる):資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)
まず、収入を増やすことです。しかし、収入が増えるほど支出も増えてしまう「ライフスタイルのインフレーション」に注意が必要です。いくら収入を得ても、その分浪費してしまえば資産は増えません。逆に、支出をコントロールし、収入との差をできるだけ保つことが資産形成には必要です。
運用利回りについては、「お金に働いてもらう」というのが基本の考え方です。投資や運用はリスクもありますが、知識と長期的な視野を持つことで、複利の力によってお金は動いていきます。もちろん、忘れてはいけないのは、お金そのものが幸福になる保証ではないことです。資産が増えても、それを使う時間だったり、心がなければ、豊かさは感じられません。
お金を増やす3つのルール
現代はコンテンツ過多の時代なので、お金を使わずとも楽しめることが増えました。Kindle Unlimitedで本や漫画の読み放題はあるし、Netflixでは映画やドラマを見られるし、無料のゲームやSNSを楽しむこともできます。こうしたことは、かつてなら相当なお金が必要だったはずです。
資産を作っていくうえで大事なのは「運用利回り」よりも「収入から支出を引いた貯蓄額」です。なぜなら、投資で高い利回りを狙うことは難しく、貯蓄率を上げるほうが確実だからです。株式市場ではプロのヘッジファンドマネージャーたちと競争しなければならず、市場平均を上回ることはほぼできないと言えます。そのため、まずは収入と支出の差をしっかりと把握し、貯蓄を増やしていくことが、資産形成の始まりになります。そして、貯蓄ができたら「どのように運用するか」を考えていきます。
運用には3つの視点があって、「コスパ(コストパフォーマンス)」と「タイパ(タイムパフォーマンス)」と「リスパ(リスクパフォーマンス)」です。
この条件をすべて満たしている投資商品は「株式インデックスファンド」です。なぜかというと、金融市場はすでに研究されており、1970年代には「ファイナンス理論」として完成されているからです。 資産形成においては、派手な利益を追いかけるのではなく、シンプルで合理的な方法を積み重ねることが近道になります。
最強の資産運用戦略:人的資本
私たちは「金融資本」と「人的資本」という資本を活かして利益を得ています。金融資本はお金を投資市場に回すことで収益を生んでいるし、人的資本は自分の時間やスキルを労働市場で提供し、収入を得るものです。豊かさを手に入れるには、この2つを活かすことが欠かせません。
注目すべきは「資本の大きさ」で、人的資本は「生涯で稼げる総収入」の現在価値として見ます。大卒で大企業に勤める場合には、男性は約3億5000万円、女性は約3億円とされています。一方で、20代前半の金融資本(貯蓄額)は数十万円程度が一般的です。つまり、若い世代にとって人的資本は金融資本の100倍以上の価値があります。
最近では、ファイナンスの勉強をしている人も増えていますが、基本的な戦略は「働くこと」で、人的資本を活かすことです。自分のスキルを磨き、経験を積み、収入を伸ばすことが、長期的な豊かさに直結していきます。資産運用も大事ですが、まずは自分という資産をしっかり育てることが、人生を豊かにするステップになります。
FXで「億り人」になる道
ビットコインと同じように「億り人」として注目される投資にFXがあります。FXは、外国為替証拠金取引と呼ばれ通貨を売買して利益を上げる金融商品です。FXの場合は、ドル円が100円から150円になったら、ドルの価値が50%上昇したことになります。短期間で動きの激しいビットコインとは異なり、FX自体の値動きはそこまで爆発的ではありません。それでもFXでうまくいる人がいるのは、「レバレッジ」という仕組みを使って取引額を大きくしているためです。
日本のFXでは、証拠金を担保に最大25倍のレバレッジをかけることができます(以前は100倍以上、現在は規制により引き下げられている)。たとえば、1ドル=100円のときに1万ドル(100万円分)を購入して、1ドル=101円に値上がりすれば1万円の利益がでます。ここに25倍のレバレッジをかけると、取引金額は2,500万円にまで大きくでき、1円の値動きで25万円の利益(もしくは損失)が発生します。
もちろんレバレッジをかけるということは、良いタイミングで利益を得る人もいれば、逆に損失を被る人もいます。しかし、損失者よりも利益を得た人に注目が集まるので「FXで億り人になった」という事例が集まり、あたかも誰でもFXで稼げるかのような誤解が広まっていきます。
FXはレバレッジによって高いリターンが期待できる一方で、大きなリスクも伴う投資にもなります。
長期の株式投資はプラスサムゲーム
投資の勉強をしたことがあるなら、「投資にウマい話はない」と聞いたことがあるかもしれません。それでも株式投資が多くの人に支持されている理由は、株式会社は「株主資本」と「負債」によって資金を集め、その資金を使って事業を運営しています。それらの事業で得られた利益は資本に入るか、株主への配当として分配されます。
つまり、株価は基本的に資本の増減によって決まる仕組みになります。事業が成功して資本が増えれば株価は上がり、逆に資本が減れば株価は下がっていきます。
株式投資に比べ、国債はリスクが低い「無リスク資産」とされており、満期まで保有すれば元本と利息が保証されているのが特徴です。しかし、国債は経済成長率やインフレ率と金利が連動するため、実質的な利益は少なくなります。株式投資は、経済成長が上がれば株価はレバレッジ効果でさらに上昇していきます。たとえば経済成長率が3%なら、レバレッジ2倍で株価は6%上昇する計算です。しかし、逆に成長率がマイナスなら下落も大きくなります。これが「株式はリスクもリターンも大きい」と言われる理由です。
金融市場を長期的な視点で見れば、株式投資は国債を上回るパフォーマンスを発揮する可能性が高いというのがファイナンス理論の基本です。だからこそ、多くの著名な投資家は「個人投資家はインデックスファンドに投資するのが最も賢明」と勧めているわけです。
マイホームとREITどちらが有利か?
バランスシート(BS:貸借対照表)では、右側に「資金調達源泉」として負債や資本、左側には「調達した資金の運用先」として資産を書きます。たとえば、1,000万円を銀行に預けた場合、そのお金はゼロ金利の環境でだと増えません。一方で、毎月5万円の家賃を払う生活を続けていれば、1年で60万円ずつお金(資産)が減っていくことになります。
では、その1,000万円でワンルームマンションを購入した場合はどうでしょう?もしマンションの価値が変わらなければ、家賃を支払う必要がなくなるため、資産は1,000万円のまま維持されています。一見するとマイホーム購入は有利に思えますが、ここに違いがあります。それは「銀行預金」と「不動産」という資産がまったく違うものだからです。
銀行預金は元本保証ですが、不動産は価格が変動するリスク資産に分類されます。つまり、リスクがある代わりに高いリターンが期待できます。もし、そのリターンが年6%であれば、毎年60万円の利益を得ることができ、家賃分と同じということになります。実は、マイホームを購入しなくても、REIT(不動産投資信託)や株式など、他のリスク資産に投資することで同じ効果が期待できます。
しかし、ここで大切なのは「分散投資」です。REITは複数の不動産に分散投資されているため、一部の物件に損害が発生しても、全体としては大きな影響を受けにくいという特徴があります。つまり、「1,000万円を使ってマイホームを購入するより、REITに投資して得た配当を家賃に充てる方が合理的」という結論になります。
さらにマイホームを購入する多くの人は、「住宅ローン」という、借金をします。この借入れがBSに加わることで、リスクやリターンの構造はさらに複雑になります。マイホーム購入は単なる資産運用ではなく、「借金」という要素が絡むため、個人のライフスタイルやリスク許容度に応じた判断が別に必要です。
8.人的資本を最大化する方法

いままでの日本では「年功序列」や「終身雇用」といったシステムが機能していました。しかし、現状このシステムを維持するのは難しくなっているのと、このシステムが必ずしも私たちを幸福にはしてはいません。「雇用の破壊を許すな!」と声がある一方で、その根本的な問題はどこにあるのでしょう。
多くの人にとって「働くことが楽しくない」という、状態からどうやって抜け出せるのでしょう。これにはまず、自分が仕事に対してどう向き合うか?という視点が必要です。仕事を「やらされているもの」として捉えず、「自分が成長する場」「自己実現の手段」としての意識がなければなりません。もちろんこれは、きれいごとや理想論に感じます。しかし、仕事を楽しむことや、自分の役割を見出せなければ、どんな職場でも満足感は得られません。
日本的な雇用形態や文化がすぐに変わることはありません。しかし、自分の仕事に対する意識や向き合い方は、今日からでも変えることができます。まずは、「自分にとって仕事とは何か?」を考え、少しずつでも楽しみを見つけていく。それが、優秀なライバルに勝つための、最もシンプルで確実な戦略になります。
エッセンシャル思考は真実だった!
エッセンシャル思考は、「本当に大事なこと」だけに集中する考え方です。私たちは日々、「あれもやらなきゃ」「これも大事だ」と多くのタスクに追われがちです。しかし、その結果、どれも中途半端になってしまい、疲れ果てて無力感に襲われていきます。これが「非エッセンシャル思考」です。やり抜く力(グリット)に頼ることは体育会系のように感じますが、それが多くのタスクに分散されてしまえば、結局どれも成果にはなりません。
それに対しエッセンシャル思考は、自分にとって何が本当に大切なのかを見極め、それ以外の優先順位が低いことは思い切って捨てます。こうすることで、エネルギーや時間を限られた大事なことに集中できます。その結果的に、仕事や勉強の質は向上し、「自分は正しいことをしている」「自分で物事をコントロールしている」と感じられ、充実感も感じられます。
情報やタスクが溢れている現代で、多くの人が無意識に「大事なことに集中するしかない」と感じているはずです。そして、そのエッセンシャル思考が持つ力は、能力の差さえも超える可能性もあります。
仕事や勉強でライバルがあなたよりも高い能力を持っていても、非エッセンシャル思考ならば、その力は分散され、成果には繋がりません。逆に、自分がエッセンシャル思考を実践できれば、たとえ能力がライバルに劣っていても、エネルギーを集中させることで、大きな成果をあげることができます。
非エッセンシャル思考では、やることが増えれば増えるほど、選択肢も増え、それによって脳は疲弊してします。選択にはコストがかかるからです。しかしエッセンシャル思考では、あらかじめ優先順位を決め、それ以外の選択は捨てるか自動化します。これだけで、能力の差はほとんど意味を持たなくなり、ライバルに差をつけることができます。
ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事
人的資本を高めるには、限られた時間という資源を無駄にしないことです。ですが、睡眠や運動のように一見すると無駄に思えるような時間が、実はパフォーマンスを支える要素であることも忘れてはなりません。そう考えると、1日に自由に使える時間はせいぜい6〜8時間程度しかなくなります。
生活をシンプルにしようと考えたとき、多くの人が思い浮かべるのは「ミニマリズム」です。よけいな物を減らし、シンプルな生活を心がけることで、自分のやりたいことに時間を使う。これは理想的ですが、実際にはこれを実践できる人はわずかです。なぜなら、多くの人が「日々のタスク」に追われているためです。
先ほどのエッセンシャル思考のように、ライバルが無駄な雑用やタスクをを捨てて、自由な時間をすべて専門性・付加価値の向上に使っていたとしたらどうでしょう。仮に自分がライバルより1.5倍優秀だったとしても、数年後にはその差を埋めることができなっています。
だからこそ、本書では「フリーエージェント」という働き方を推奨しています。専門性に集中し、自分の時間資源を活用できるからです。一般的な職場では「雑用はやりません。会議にもでません」と言える選択はありません。しかし、海外ではクリエイティブな仕事は独立したプロフェッショナル(フリーエージェント)がやり、企業はバックオフィス業務や市場への流通、法務対応に専念するという役割が定着しています。
時間資源という資本をどこに集中させるか。それが、これからの働き方においての戦略となります。
メリトクラシー『M=I+E』とは
大きな声では言えませんが、現代のリベラルな知識社会では、人の価値は「学歴・資格」「業績」「経験」の3つで評価される「メリトクラシー(能力主義)」が根付いています。この考え方は、知能(Intelligence)と努力(Effort)の掛け合わせが成果(Merit)を生むという理論が根本にあります。しかし、現実は「知能」という要素は遺伝的要因が大きいため、努力だけでは超えられないとされ、代わりに「学歴」が努力の成果として扱われています。
アメリカでは1960年代の公民権運動以降、人種や性別で差別することが批判され、学歴が公平な評価基準とされました。その結果、『年収は「住むところ」で決まる』のように、大学卒業者と高卒者の収入の差は拡大し、社会的分断が広がっています。日本でも大卒と非大卒の間には見えない壁があり、教育が分断を解消するどころか、むしろ拡大させているのが現状です。
「努力すれば報われる」という言葉はきれいな理想ですが、その背景には「学歴」というのが存在し、それが社会構造の基盤となっています。
成功するには誰かの推しになる
フリーエージェント(弱者)の戦略には、「分野をずらす」「階層(ジャンル)をずらす」ことと、「新しい場所に移動する」という方法があります。これは「ベンチャー戦略」とも呼ばれるものです。自然界にある「パイオニアプランツ」という植物は、栄養が少なく硬い土壌でも成長し、根を張ることで土地を改善していきます。しかし、その結果として豊かな土地には強い植物が侵入し、パイオニアプランツは別の未開の地を求めて種を飛ばすことになります。これはまさに「変化の激しい環境ほど弱者にチャンスがある」ということを示しています。
現代のビジネスでも同じように、大企業のようにコストをかけてゆっくり成長する戦略は、新しい市場で成功するのは難しくなります。逆に、資金の少ないベンチャー企業やフリーエージェントはスピード感を持って、低コストで市場に飛び込むことができます。
SNSやYouTubeの登場で、自分に合った小さな市場の道を見つけやすくなりました。こうした「個人化」の流れにマス媒体は対応しきれず、少しづつに存在感を失っていきます。しかしその代わりに、小さな市場でうまくいく個人が増えていきます。自分と似た属性の人に向けた情報発信は、小さなビジネスとして成立し、そこから新たな付加価値が生まれるからです。
成功するには「誰かの推し」になることがです。どんな小さなジャンルでも、そこでナンバーワンになれば熱狂的なファンがつき、ビジネスとして成り立ちます。SNSが広がる現代では、自分に合ったニッチ市場を見つけ、そこで情報や付加価値を提供するのが成果に繋がります。
9.社会資本を成功に活かす秘訣
あなたがどのような人物になりたいのか気持ちとは別に、私たちは「親しい友人5人の平均である」という言葉を聞いたことがあるはずです。これは精神論ではなく、ネットワーク科学でも事実になっています。たとえば、あなたの友人5人がイーロン・マスクやジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、そしてグーグルの創業者であるラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンだったら、あなたもそれに近い人物になれます。しかし、ここで重要なのは「成功者と友人になること」それが目的ではないということです。
友人関係は一方的に選べません。どれだけ優秀だろうと、相手に「友人として選ばれる」という要素が必要になります。逆に言えば、今あなたの周りにいる友人は、あなた自身が無意識のうちに引き寄せ、選ばれてきた結果になります。
この「友人の平均」という考えは、他人に左右されるという意味ではなく、自分自身がどんな人間でありたいか?を映す鏡になります。今の自分に満足していないなら、まずは自分がどんな人間関係を築いているのかを振り返ってみると見えてくるものがあります。そして、自分自身も「選ばれる友人」になることが必要です。
友人関係はたまたま会った偶然に見えるかもしれませんが、すべて自身の選択と行動の積み重ねによって引き寄せられた関係です。どんな人と時間を過ごし、どんな価値観を共有していくのか。その積み重ねにかかってきます。
友だちはなぜ似てくる?
人はなぜ自分と似た人と友人になるのでしょう?これは同類性(ホモフィリー)という本能的な傾向があるからです。「類は友を呼ぶ」という言葉の通り、似た者同士が集まり、互いに信頼関係を築きやすくなります。この傾向は進化の過程で重要な役割を持っていました。
私たちの祖先は昔、小さな集団で暮らしていました。母親が新しい子どもの世話をしている間に、上の子どもたちは弟妹の世話をし、集団内で互いに助け合って生活していました。しかし、すべての子どもが平等に扱われるわけではなく、血縁が遠い子どもには関心が薄れがちです。幼い子どもにとって「誰が自分を助けてくれるか」を見極めることは生存に直結するスキルだったのです。
同じ思考や特徴を持つものが仲良くなる関係には、その血縁者である可能性が高く、近くにいることで安心感や信頼関係が生まれるからです。
思春期になると、この同類性はさらに顕著になっていきます。中学や高校で自然に形成される「ヤンキー」や「ギャル」グループ、大人しい「陰キャラ」グループなどは、その典型例になります。これらのグループは、進化の過程で培われた「集団を作ることで生き残る」という戦略が形を変えて現れたものと似ています。
また、ひとりで孤立していると、他の集団から攻撃されるリスクが高くなり、生き残ることが難しくなります。さらに女性の場合、集団から排除されることは子育ての困難さにも直結していました。つまり私たちの人間関係の根底には「同類性」という進化の遺伝が残っているのです。
「引き寄せの法則」とネットワーク効果
私たちは無意識のうちに、自分と似たような性質(性格)を持つ人を引き寄せています。たとえば、太った人は同じように太った人と友だちになりやすく、逆に健康意識の高い人はそれに似た価値観を持つ人と集まりやすいものです。これは「同類性の法則」と呼ばれ、幸福や不幸も同じように伝染する可能性があるとされています。幸せな人は多くのつながりを持ち、ポジティブな影響を周りに与えますが、不幸な人は孤立しやすく、その影響は周りにも伝わってしまいます。
また、「引き寄せの法則」にあるように、自分が理想とする姿を強く思い描き、そのように振る舞うことで、自然と理想の人間関係が築かれていきます。ただ、自分自身を変えるのは簡単ではなく、必ずしも理想の関係がすぐに手に入るわけではありません。それでも、人間関係を見直し、マイナスの影響を与える人から離れることで、環境がポジティブに変化していきます。
中国には、芝麻信用(個人の信用度をスコア化)のように、友人ネットワークが信用力に影響を与える仕組みもあります。私たちの周囲の人間関係は、自分自身に影響を及ぼしていきあす。自分の理想を手に入れるためには、関わる人を慎選び、付き合い方を意識することが大切になります。
人間関係は自分で選ぶ働き方へ
リベラルな社会では、職業や結婚、子どもを持つかどうかなど、人生の選択は個人の自由に決めることが理想です。それでも「選べない関係」という絶対的な存在があります。それが、親や兄弟、子どもといった家族関係であり、どれだけ不満があっても変えられず、「親ガチャ」や「毒親」といった言葉が生まれました。
その他にも、学校や職場においても、自分では選べない人間関係があります。同じクラスやチームにランダムに決まり、友人や同僚、上司との関係に悩むことは避けられません。そして、飢餓や戦争などのリスクが薄れた先進国では、こうした問題から「人間関係」から生まれていきます。これを解決していくには、「自分で人間関係を選ぶ」ということが必要です。
シリコンバレーに広がっている「ギグワーク」は、働く時間や場所、一緒に働く人まで自分で選べる働き方です。この自由な働き方は、避けられない人間関係からくるストレスを軽くし、主導権を自分に取り戻すことができます。
これからは、あらゆる場面で「選択する力」が重要です。人間関係さえも、自分で選びどのような人物になりたいのかを考えていく必要があります。
テイカーとギバーの違い
「テイカー」は受け取る人、「ギバー」は与える人のことで、自己啓発本を読んでいると「与える人になろう」とよく言われますが、現実には限りがあり、何でも与え続けることはできません。しかし、与えても減らないものがあるとしたらどうでしょう?それが「情報」と「人の紹介」です。
ネットワークの社会では、情報や人脈を与えることで信頼関係が築かれ、コミュニティが作られます。ビジネス交流会では、「この人はこんなビジネスで成功した」「あの人を紹介するよ」といった情報がよく行われています。これらは与えても自分の手元から減ることはなく、むしろネットワークは広がり、繋がりは強化されていきます。
ただし、こういった関係を維持するには時間やエネルギーが必要です。そのトレードオフには、柔軟なネットワークを築き、協力し合う関係性を持っていなければなりません。そして、そうして生まれた時間やエネルギーは、大切な人やその瞬間に注ぎ込むことができます。
与えても減らないものを共有し、新しい形の関係を築くことこそが、これからの社会で求められる「ギバー」の在り方になってきます。
10.『シンプルで合理的な人生設計』を読んだ感想
『シンプルで合理的な人生設計』を読了。
「時間はお金より希少で、取り戻せない資源⏳」
与えても減らないもの情報🧠と人脈🤝を惜しみなくギブせよ。
社会を生き抜くための戦略的思考が詰まった一冊。無駄を削ぎ落とし、本当に大切なことに集中する。人生のPDCAに。#シンプルで合理的な人生設計 pic.twitter.com/7fbVBoVEfS
— Yuuki F. Davis (@yuukifdavis) January 2, 2025
この本を読んでいくと、「何かを得よう」とするよりも、まずは「選択肢を減らす」というのが大切さです。私たちは日常のなかで、決めきれないことや迷うことが多すぎて疲れていきます。
著者は「シンプルに合理的に生きることが、豊かな人生を作る」としています。たとえば、朝の服装を選ぶ時間を減らすために、同じような服を揃える。食事も、健康に良いものをルーティン化して選択の手間を省く。そんな小さなことが、全体に影響を与えていきます。そして、それが単に効率化を目指すだけでなく、自分の大切な時間やエネルギーを、価値あるものに注ぎ込むための手段になります。
選択肢が多いことが必ずしも自由や幸福に繋がるわけではありません。選ぶことに時間やエネルギーを使いすぎてしまうと、私たちは知らないうちに疲れ切り、本当に大切なものを見失っていきます。
簡潔にまとめてしまえば、幸せになるには「お金持ちになる」のがいちばんシンプルな答えになってきます。ただし、多くの人はお金を増やすために時間を犠牲にしがちですが、本書では「時間は取り戻せない有限な資源(リソース)である」と強調しています。その上で、人生の目的や優先順位を明確にし、エッセンシャル思考を使って自分にとって大切なことに時間とお金を使うべきだと指摘しています。
誰でも始められて効果の高い習慣として、毎日25分の散歩と睡眠があります。短期的に見ればすぐに結果がでないことですが、何カ月、数年と続けていくことで大きな恩恵を受けられるようになっていきます。
また、「ギバー」と「テイカー」に関しても、情報や人脈など「与えても減らないもの」を惜しみなく提供することで、周囲との信頼関係が築かれ、結果的に自分自身にも大きなリターンが返ってくるという考え方は、現代のネットワーク社会において有効に感じます。
11.まとめ:効果的な幸福は、お金持ちになること
まとめとして、本書の『シンプルで合理的な人生設計』は、「シンプルで合理的に生きる」をテーマにしています。経済的な自由が人生の多くの側面に影響を与えています。お金があることで、日々の不安やストレスを軽くできるだけでなく、よけいなことを考えなくていいので、自分のやりたいことや他者への貢献の機会も広がってきます。
繰り返しになりますが、経済的に自由を手に入れるためには3つの要素です。
経済的独立(お金持ちになる):資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)
- 収入を増やす: 仕事で昇給を目指す。副業やビジネスを始める(フリーエージェントとしての活動)
- 支出を減らす: 無駄遣いをやめ、必要なものにお金を使う。節約を通じて手元資金を確保
- 運用利回りを上げる: 貯めたお金を投資(例:インデックスファンド)に回し、長期的に資産を増やす
この3つを同時に実践することで、経済的自由(FI(経済的独立:Financial Independence))へのスピードは上がっていきます。

『年収は「住むところ」で決まる』の要約: 経済地理学が明かす「都市」と「所得」の関係
以前に、この本を読んで優先順位の付け方やリソースの使い方を見直すことができました。選択と集中で心が軽くなった気がします。
コメントありがとうございます!📚優先順位の付け方やリソース配分を見直すことで、心の余白が生まれる感覚、まさに真髄ですね。⚖️🧠「選択と集中」はシンプルですが、最強の戦略です。
自分の時間やお金の使い方がいかに無駄だらけだったか気付かされました。「減らないものを与える」という考え方をシェアしていこうと思います。
コメントありがとうございます。情報はシェアすればするほど循環し、自分にもリターンが返ってきますよね。シンプルで合理的な人生を追求していきましょう!🚀😊