Drew Eric Whitman(ドルー・エリック・ホイットマン)の著書、「現代広告の心理技術101」の要約とBook Reviewをしていきます。現代広告の心理技術101は、広告の世界に興味がある方やマーケティングを学びたい方にとって、様々なテクニックや心理技術を網羅した一冊になっています。
この本は、広告業界で使用される心理学的技術などを紹介しつつ、それらがどのように効果的な広告に繋がるかを解説しています。一般的なコピーライティング本やマーケティング本との違いは、より実践的な内容になっているところです。
なので全くの初心者が読んで知識を得るというよりは、既に何かしらの文章なり、セールスをしている人がさらにブラッシュアップをするための内容になっています。ダイレクト出版の中でも常に1位になっている理由は、現代広告の心理技術101に書いてある内容の真似のしやすさと、再現性の高さです。
「顧客に何を言えば商品を買ってくれるようになるのか」、「どのようなコピーを書けば行動せずにはいられなくなるのか」、「消費者はどういう心理からレスポンスをするのか」など、見込み客が買わずにはいられなくなるような、心理のからくりを解説しています。
Contents
1.「現代広告の心理技術101」の概要
現代広告の心理技術101
Drew Eric Whitman【著】
コピーライター
ダイレクト出版
2011年12月発売
A5判・343頁
定価4,070円(本体3700円)
2.ドルー・エリック・ホイットマンについて
「ドクター・ダイレクト! TM」として知られるドルー・エリック・ホイットマンは、米国ダイレクトレスポンス広告界の第一人者です。彼は11歳からダイレクトレスポンス広告による販売を始め、テンプル大学で広告学の学位を取得した後、広告の世界で注目を集めるようになりました。
彼はフィラデルフィア最大の広告代理店のダイレクト・レスポンス部門で長年にわたり活躍し、世界最大手のダイレクト型保険会社やカタログ大手のデイ・タイマー社でもコピーライターとして勤務しました。彼のクライアントには、全米自動車協会、アドバタイジング・スペシャルティ・インスティチュート、米国在郷軍人会、アモコ、ファーバー・カステル、テキサコ、デイ・タイマーなど、アメリカで最も成功している多数の大手企業や組織が含まれています。
現在、彼はコピーライターとして活躍しており、またトレーナーとしても活動しています。
共著の中に『The $50,000 Business Makeover Marathon(5万ドルの会社改造計画)』という本を執筆し、全米各地の商工会議所で開催されている「CA$HVERTISING」短期集中広告セミナーの開発者とプロデューサーとして高い評価を得ています。
3.広告とは消費者に行動を促すこと
そもそも広告の目的というのは、消費者に行動を起こしてもらうことです。あなたが何かしらの商品を販売しているならば、その商品を買ってもらうことが目的になってきますし、保険のセールスをしているならば契約を取ることが目的になってきます。その行動を起こしてもらうツールとして広告があり、広告が目的ではありません。
そして消費者は自分自身に一番関心があります。
どれだけ素晴らしい商品を持っていたとしても、それが自分にとってどれだけ効果があるのかが重要であって、どれだけの時間が掛かったとかどれだけ努力をして作り上げたかなどは関係がありません。あくまで自分のにとってのメリットを考え購入するべきか、不要な物なのかの判断をします。
そのため、人が物を買う理由を知るためには、消費者について知り、消費者が常にどのようなことを考え、どのように生きているのかを知り、その日常の基準やどのように過ごしているのかなどを知っておかなければなりません。
行動を起こしてもらうためのコピーの書き方は、見込み客の頭の中で販売したい商品やサービスが視覚的にイメージできることが重要になってきます。つまり、見込み客がその商品を見ただけで、どのようなことが得られるのかを脳内でイメージできる必要があります。脳内でイメージできるということは、不要な説明や説得が不要になるので、行動を起こしてもらえる確率も必然的に上がっていきます。
4.人間の「基本的な生命欲求8つ」と「二次的欲求9つ」
人間というのはどんな時代になっても、基本的な生命欲求が8つあり大きく変わることはありません。これら8つの生命欲求に対する商品やサービスというのは、売れやすい(消費者が潜在的に求めている)ということになります。
基本的な生命欲求8つ
その8つの生命欲求とは、
- 長く生きて、人生を楽しむ欲求
- 食の欲求
- 恐怖を逃れる欲求
- 性的な欲求
- 快適な暮らしの欲求
- 優越的な欲求
- 愛する家族を守る欲求
- 社会認知の欲求
などがあります。これらの欲求に従った広告を作れば人間の本能的な部分にアプローチできるので、反応率が上がっていきます。私たちの身体にプログラムされている要素なので、嫌でも反応してしまうというのが事実です。もちろん、全ての人がこれらの8つの欲求だけで完結しているわけではなく、後天的な9つの欲求というのも存在します。
これらの二次的欲求も人は欲しているので強力な広告になりますが、生命欲求の8つには及びません。
後天的に身に着けたものなので、脳がどうしても欲しているわけではありません。人間の欲求だけを考えるのであれば、生物学的な欲求に勝てるものはありません。新しい服を買うのか、野生の熊に襲われるのかを選択する時に後者を選ぶ人はいません。親しい友人が喧嘩をしている時に、近所のコンビニに買い物に行ったりしないわけです。
それに生命欲求の場合は私たちがそれを気付いていない場合であったり、気にしていない場合すらあります。
二次的欲求
次に後天的な二次的欲求は9つあります。
- 情報の欲求
- 好奇心の欲求
- 身体や環境の欲求
- 能率の欲求
- 便利の欲求
- 信頼性の欲求
- 流行の欲求
- 節約と利益の欲求
- 掘り出し物の欲求
どれも生命欲求には勝らないものの、これらの欲求も満たすために人は行動します。
5.ターゲットが憧れる存在は誰か
人間は社会的生き物で自分は何かのグループや団体(似た集まり)に、属す必要があると考えています。基本的には友人や恋愛関係を必要としているし、結婚し子供を授かりたいと思っている人が多いのも事実です。つまり誰か他人と何かしらの関係を構築し、複数や集団で共存をしたいと考えています。
そして集団には3つの種類に分類されます。
- 憧れの集団(属したい)
- 連帯の集団(価値観共有の集団)
- 関係断ちの集団(属したくない集団)
というように分かれています。あなたが売りたい商品やサービスをこれら集団と結び付ければ、見込み客は何かしらの集団に属したいと考え行動するようになります。当然ですが、最初の「憧れの集団」に入りたいと思ってもらわなければならないので、その世界観を創る必要はあります。
6.見込み客は自分のメリットに最も関心を持つ
すべての広告に必ずといっていいほど必要になってくるのが、メリットです。メリットがなければ人は行動をしませんし、商品を買ってくれることもなくなります。どんな物を販売していようとメリットを最も重視する必要があります。
なぜなら人は自分の利益に最も興味があるためです。
メリットとは見込み客がそれを手にした時の自分が得られる価値のことで、あなたにではなく見込み客のためになるというのが絶対条件です。広告やセールスレターで使う際は、ヘッドラインに最大のメリットを入れるようにします。なんぜなら、広告を読んでいる60%はヘッドラインしか目を通さず、自分の興味のありそうなことに目が留まらない限り、すぐに離脱をしてしまうためです。
自分の狙っている見込み客を最初のヘッドラインで読ませることができれば、その後の文章を読んでくれる可能性が高まります。
7.反応するダイレクトメールの作り方
ダイレクトメールにしろ、メールマガジンにしろほとんどの人は届いた瞬間にゴミ箱のフォルダに入れるか、件名だけを見て削除するべきか読むべきかの判断をします。実際にあなたのメールボックスにも毎日沢山のメールが届いているはずです。ダイレクトメールで人の心を掴むというのは簡単ではありません。
ダイレクトメールで人に読んでもらうには、「おばあちゃんが書いてきた手紙」を参考にして書き上げるようにします。
おばあちゃんが実際にあなたに手紙を出すのを想像してみます。多くのパッチワークが付いた衣類を身に着け、自分で編んだであろうショールを肩にかけ、どこにでもあるような平凡な白い封筒を手にしあなたに手紙を書こうとしています。あなたの名前を丁寧に書き、優しいあおばあちゃんらしい文体であなたの健康を気にかけています。まるで話しかけられているかのような語り口で、一文字づつ書かれています。手紙を白い封筒に入れ、切手を舌で舐めてポストに投函して、あなたに届くを待つ。
これがダイレクトメールの作り方です。
これの特徴的なところは、豪華ではなくシンプルで個人的な手紙になっている点です。多くの広告(セールスレター)や郵便物は多くの人に早く開封するべきというのが前面に出ているのに対し、おばあちゃんの手紙は個人的であなただけにひっそりと開封されるような仕組みになっています。セールスレターも同じでターゲットとなる人を個人的にイメージし、「あなただけに書いています」というのを知ってもらわなければなりません。いかにも大勢に書いたような内容だと、直ぐにゴミ箱に入れられ二度と目に入れてもらうことはなくなるからです。
8.長すぎるコピーはない。退屈なコピーがあるだけ。
一般的にコピーライティングは短い文章の方が反応が良いとされています。理由は、簡潔に重要なことを伝えられるし、長く文章を書いたところで自己満足でほとんどの人はそんなの読まずに自分のメリットがあると思えば買うし、メリットが無いと思えば買わないためです。そのため、短いコピーの方が波反応率が良く伝えたいことを分かりやすく伝えられると言われているためです。
ですが見込み客が本気で商品を買おうと思っている場合には、長いコピーは読まれていることが分かります。そして短いコピーよりも、長いコピーの方が反応率が良く多くの情報を届けられるとされています。つまり、長すぎるコピーというものは存在せず、退屈でつまらないコピーがあるだけということになります。
冒頭にあったように、広告の本来の目的とは行動してもらうことです。
長いコピーというのは情報量が多く、読んでいる人の欲求を高まらせ、購入するべきだと納得をしてもらい、購入という行動をしてもらいやすくなります。優秀な販売者が居て10分しか話さなかったのと、2時間話した販売者とでは後者の方がより親しみを抱き、買う気持ちを強くさせてくれます。これは話しているうちにあなたの欲しいを引き出し、行動を起こさせるまで自分が納得したということです。
反対に短いコピーは、簡潔にまとめられているかもしれせんが商品の情報を上手く引き出し、相手の欲求を高ぶらせ行動を起こすには難しい部分もあります。このように、長いコピーというのは、短いコピーを包括していると言えます。
9.「現代広告の心理技術101」を読んだ感想
現代広告の心理技術101は、ダイレクト出版で常にランキング1位になっていることもあり実践的で真似しやすい書籍になっていますが、これから広告を学ぼうとしている人だったり、コピーライティングのことを勉強しようと思っている人にとっては、物足りない印象があるかもしれません。
そのため、既に何かしらの広告やコピーを書いていてもっと反応率を高めたいという人だったり、見込み客の成約率を上げたい人にとっては参考になる部分が多い書籍という印象です。
即効性やテクニック、ノウハウは多くまとめられていますが、各セクションの説明が短いのでもっと深く知りたいという人にとっては説明不足に感じる可能性があるためです。広告や販売で相手を説得させるだけに特化をするのであれば「説得の心理技術 要約&レビュー:効果的な説得法の秘訣」にあるような、自分に関心を持ってもらうような方法もあります。
現代広告の心理技術101にあるようにこれだけのテクニックやノウハウが多くなってしまうと、一体どれを実行すればいいのか、何を試したらいいのか迷ってしまう場合もあるかもしれません。
まずは、どのような言葉選びやデザインが人々の心に訴えかけるのかを一度読んで、実際に成功した広告の事例を応用できないか検討すれば、理論だけではなく、実践的な知識も身に付けることができます。
繰り返しになりますが、現代広告の心理技術101は広告に関する初歩的な知識を前提としているため、広告やコピーライティングに詳しくない人にとっては、理解が難しい部分があるかもしれません。また、一部の内容がやや古いものもあり、最新の広告のトレンドについては触れられていない点が少々残念という印象です。
10.まとめ
広告というのは単に商品を紹介するだけではなく、消費者の欲求を刺激し、商品を買いたいと思わせることが求められます。現代広告の心理技術101では広告における心理学的手法を使って、消費者の心理状態に合わせたアプローチを提案しています。
消費者は新しいものに興味を持ち、安心感を求める傾向があります。
その商品の魅力を伝える手法として、具体的な数字や統計データを用いる方法や、顧客の声を引用する方法などがあるということです。アクションを促すキーワードを使ったり、商品の特徴を強調する言葉を使う方法、適切なターゲットに向けたメッセージを送る方法を使います。
本書では広告のデザインについても触れられています。色彩やレイアウト、フォントなどが消費者の意識に与える影響について説明され、適切なデザインによって商品を魅力的に見せる方法が紹介されています。本書は広告における心理技術の活用方法をわかりやすく解説しており、広告業界に携わる人だけでなく、商品を宣伝したい人やマーケティングに興味のある人が読んでおく一冊です。
もしまだ初歩的な知識を持っていない場合は、他の書籍を読んでから購入すると理解度が高まります。
コメントを残す