Piers Steel(ピアーズ・スティール)の著書「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」のBook Reviewをしていきます。著者のPiers Steelは先延ばしをする人の研究者であり、自身も先延ばしをライフワークにしてきたという実践者です。単純に先延ばしについて書いているというだけでなく、自分自身で先延ばしを実践してきたからこその説得力と、根拠があります。
本書は通常の書籍と違って、いくつもの書籍と論文を根拠に書かれているので、読んでいてなぜ人が先延ばしをする理由とその納得感があります。なので、この本自体が論文らしく仕上がっています。
そもそも先延ばしとは、「自分では重要でやるべきだと分かっているのに、それを後回しにする行為の事」です。自分で重要と分かっているのがポイントで、やった方が良いと分かっているのに、それをせずに他の事をしてしまったり、逃避したりします。類似する内容として延期がありますが、延期は物事の適切なタイミングを待ったり計ったりしているのに対し、先延ばしは既に重要と分かっているのに、それをやらずにほったらかしにしていると言えます。
本書によると人口の95%は先延ばしをしてしまったり、先延ばしの癖を持っていると自覚しているようで、ほとんどの人が悩んでいたり持っていたりする性格(性質)になります。
裏を返せば先延ばしの癖を辞める事ができればその他大勢から一気に抜きに出る事ができるので、自身の癖にしてしまうと厄介ですが、克服したりうまく付き合っていければ頼もしい味方になってくれるのです。
Contents
1.ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのかの概要

- ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか
- 著者: Piers Steel
- 出版社: CCCメディアハウス
- 発売日:2012年2月
- 価格: (本体1,980円+税)
2.先延ばし癖のDNA遺伝情報
そもそも人はなぜ先延ばしをしてしまうのか?頭では重要と分かっているのに、なぜ後回しにしてしまうのか?について、本書では9000年前まで遡って解説されています。私達の祖先は先延ばしをせずに生きていく方が正しかったのだ。昔であれば食料が獲れればダイエットや栄養素など考えずにすぐに食べてしまった方が良いのです。余計なことを考えて保存などしている時に、いつ自分が獲物に食べられてしまうかもしれないし、栄養のバランスなどを考えている余裕もありません。
捕獲した獲物はすぐに食べるべきだったわけです。
これは脳で言えば辺縁系が中心になって動いている時で、先のことはお構いなしの状態です。何か衝動があればすぐに実行するし未来のことを考える必要もありません。快楽と恐怖を司っているのが辺縁系です。
それに対し、未来の予測をしたり将来得られるメリットを考えるのは脳の前頭前野の部分です。前頭前野が活発になると何かを計画したり、物事を慎重に考えたり忍耐強くなります。私達はこの前頭前野が働いてくれつおかげで、「どういう行動を取ればどいう結果になるのか」を予測したりイメージできます。さらにこのイメージに辺縁系が加わることで、どの選択肢が一番良いのか決断する能力にもなっています。
ただし、この辺縁系と前頭前野の組み合わせが先延ばしも生み出します。
前頭前野が長期の目標を考えたり俯瞰するのに対し、辺縁系は「いま」にしか興味がないので、頭でやらなければならないことがあったとしても、辺縁系に邪魔をされて「いまの欲求」ばかりに従ってしまうと、とうぜんながら先延ばしが発生します。前頭前野は進化の過程であとになって発達した部分なので、辺縁系の方が影響力が強く、こうなってしまうと前頭前野で物事を考えたりするの難しくなってしまいます。
これを考えると人が先延ばしをしてしまうのは、当然とも言えます。
3.衝動に負けやすい人は先延ばし癖が強い
人が先延ばしをしてしまうのは脳の構造上誰にでもあり得るものだとして、「一体どういった人が先延ばしをしやすいのか?」辺縁系が有利と言っても、きちおんと長期的な課題を計画し、実行する人は居ますし、珍しい事ではありません。
ただ、衝動に負けやすい人は要注意です。
一時の衝動に駆られやすい人ほど、先延ばし癖を持っていると言えるでしょう。全てをいま手に入れたいと思ってしまうのです。甘い物を食べたいと思えば食べてしまうし、宿題や課題があると分っているのに、目の前の遊びやテレビに夢中になってしまう。将来のために今我慢すべき事ができなくなっています。
例えばダイエットをしようと決意した時に、衝動に負けやすい人は夕食のケーキやプリンは太ってしまうと分っているのに、その時の衝動で「明日からダイエットをやればいいや」と考えて先延ばしにして、食べてしまいます。一日だけのつもりが翌日も食後になると食べてしまい、ダイエットの決意は先延ばしになっていきます。
衝動性は今の瞬間だけを考えて行動する性質です。
夏休みの宿題を考えてみると分かり易いかもしれません。仮に夏休みの宿題が30ページと30日の夏休みあったとして、衝動性の弱い人は宿題をやらなければならない不安を感じ、「毎日1ページやっていけばきちんと終わる」という予測と計画を立てるのに対し、衝動性の強い人は宿題の不安を感じた時に「宿題に対するやりたくないという気持ちを優先させ、逃避や宿題を先送りにして自分の意識から遠ざけよう」と考えます。(先延ばし癖を持っている人は物事を計画するのも苦手な傾向があります。)
遠ざけた結果残り3日になって急いで始めたり、前日に一気に終わらせる事になってしまいます。
4.誘惑が近くにあると先延ばしが助長される
先延ばし癖を持っている人の中には、「先延ばしをするのは危険で自分の首を絞めると分かっている」としても、なかなかそれを解決できないと悩んでいるかもしれません。これは当然の事で、現代は先延ばしが非常に助長されやすい時代だからです。というのも、自分にとっての誘惑が近くにあればある程、先延ばしが強くなっていくためです。
中でも強力な誘惑として、
- テレビ
- コンピュータ(タブレット)
- SNS
- ゲーム
などが強い誘惑で、本来やるべき事があるのに先延ばしを強くさせています。あなたも経験があるのではないでしょうか?「たった5分YouTubeを見ようと思っていたら2時間経っていた」という経験だったり、「SNSの返信を返そうと思ったら、他人が気になってしまい1時間もSNSサーフィンをしてしまった」「息抜きのつもりでバラエティ番組を見ているつもりが夜まで見続けてしまった」などあるかと思います。
これらの誘惑が近くにあると強烈です。
この中でもコンピュータは特に危険で、これさえあればテレビも視聴できるし、SNSやゲームも可能な全部入りな道具になっています。最近ではUber Eatsなど食に関しても配達が可能になったので、誘惑はさらに増加します。これらを断つと考えるのは簡単ですが、実際に行動に移すとなると難しいのも事実です。
5.先延ばし人間は成功も所得も低い
先延ばしを得意とする人にとって言い訳もあって、「追い込まれた方が能力を発揮できる」というものです。あなたの周りにもこういった人が居るかもしれません。ですが実際は先延ばしをしている人は、早急に取り掛かるよりもアイディアも悪いし、質や量共に落ちている傾向があります。なぜなら切羽詰まった環境というのは、人間の創造性が低くなってしまうためです。
創造性というのはリラックスできていなければばりません。
さらに、先延ばし人間は教育や仕事、資金面についてもそうでない人よりも成功できないとされています。人生において先送りを重大にしてしまうほど、顕著になっていき、気づいた時には手遅れというパターンも珍しくありません。健康に関しても同じで先延ばし派は検査や治療を遅らせるだけでなく、そもそもそういった状況や健康状態を作り易い傾向にあります。
6.先延ばし人間の罪悪感と後悔
人によっては、「先延ばしは自分の事だから誰にも迷惑をかけてないからいい。」と思うかもしれませんが、先延ばしをしている人にとって健康やメンタルも悪くさせてしまっています。というのも、冒頭に戻りますが先延ばしは「自分でやった方が良いと分かっているのに先送りしている状態」だからです。つまり、自分の頭では重要な事だからやった方が良いと気付いているのに、今の衝動に負けてしまって後回しにしている状態だからです。
つまり、先延ばしをしている自分に対してストレスと罪悪感を感じているのです。(重要だと気付いてなければ、先延ばしではありません。)さらに先延ばし人間が感じるのはストレスと罪悪感だけでも大きいのですが、これらのタイプの人は「今すぐに満足感を得たい」とも思っています。何か夢や目標があったとしてもすぐに結果が出ないとやりたくないと感じたり、そもそも自分には無理だと思ってしまい挫折をしてしまいます。
こういった悪循環にも陥り易くなります。
そもそも先延ばしにしている事はイメージで大変だと思っていたり、難しいと感じていたりするものですが、いざ始めてみると「思ったより大変では無かった」というのも往々にしてあります。
7.先延ばし癖を治す方法
ここまでで、「人はなぜ先延ばしにをしてしまうのか」であったり、それに対するデメリットが沢山出ましたがそもそもどうやって先延ばしを克服していくのかまとめていきます。本書では先延ばしを辞めるテクニックとして13の行動パターンが紹介されていますが、ここでは私が効果が高そうだと感じたものを4つ紹介します。
- いま実行すべきなのに先延ばしにしている最重要事項をはっきりさせる
- 長期目標を達成する上で誘惑となっている物を確認
- 1キロずつではなく1メートルずつ進む
- ゴールを具体的に設定する
そもそもいま現在自分が、「何に対して先延ばしをしているのか」はっきりとさせます。これがあやふやだと頭に靄が掛かった状態になってしまい具体的な解決策や何が自分のストレスになっているのか分かりません。なのでまずは、自分が「どんな事に対して先延ばしにしてしまっているのか」「いままでやろうとしていたけれどずっとやって来なかった事は何か」を明確にする必要があります。
何に対して先延ばしにしているにか明確になったら次はそれを実行するための行動に移す必要があります。行動に移すといっても前述したように現代は誘惑が無限にある状態なので、決意をもって「先延ばしを辞めよう!」としても難しいものがあります。ではどうすればいいのか?誘惑を消す(断つ)のが先延ばしを辞めるための方法です。もしテレビの誘惑に勝てないと思ったらテレビを捨ててしまう。ゲームの誘惑に勝てないと思ったら処分をしたりアンインストールしたりして、目に触れさせないようにするなどです。
そこまでする必要があるか?と感じますが、実際誘惑というのは恐ろしいほど強烈です。強い意志を持っていたとしても勝てるわけではありません。だからこそ自分の夢や目標の邪魔だと感じたらいっその事、自分の前から消してしまうのが手っ取り早いと言えます。
先延ばしにしている事をはっきりさせ、誘惑を確認したら成功するのか?と思いますが、実際はそう簡単にはいきません。なぜなら人にはコンフォートゾーンと呼ばれる居心地の良い状況や空間があり、今までの自分がそれを覚えているためです。どれだけ誘惑を断とうとしても、最初は進んでは下がるのような状況が続くかもしれません。
ですが、それで良いのです。
いきなり100点を狙うのはではなく、今までよりも1メートルでも前に進んでいれば良しとする。1メートルだけだとしても、今までよりは着実に夢や目標に近づいていたり、先延ばしを克服できているので前進と捉えます。間違っても、最初から1キロを完走するようなやり方に拘ってしまうと途中で挫折した時に、今までよりも大きな
先延ばしをしていまったり、自己嫌悪になったりしてよけいにストレスを溜めてしまう可能性があります。
なので、最初は1メートルづつでいいので、進むのが重要です。
紹介する4つ目はゴール(夢や目標)を持って先延ばしを克服するやり方です。ただ先延ばしを辞めようと思ってもそもそも、夢や目標がないと、「なんのために頑張っているのか」という自問自答のような世界に入ってしまいます。なので中長期の夢や目標を持って「いまはそのために先延ばしをせずに行動している」とすれば、自信も湧き結果的に先延ばしも克服できてしまいます。
8.まとめ
先延ばしという誰もが悩んだ事がある課題に対して真っ当に解説したのが本書になります。先延ばしは「人間の性質だから仕方が無い」と言えばそれまでですが、他の人が同じように悩んでいるからこそ、自分が克服すれば大きな恩恵を受けられます。そのためにはまず、夢や目標を決めて、自分が何に対して先延ばしをしているのかを具体的にし、誘惑しているものをはっきりさせなければなりません。
あとはそれに対し少しづつ前進していく。
先延ばしは自分が自覚する事で罪悪感や後悔、ストレスが溜まってしまうので「百害あって一利なし」となります。
人間の本能でもあるので非常に難しいタスクではありますが、それを克服した先に大きな夢や目標を達成できていると考えれば、克服しがいはありそうです。

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